東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)94号 判決
一 本件の争点は、補正による付加構成が当初の明細書の文言または図面に示唆されているかどうかの点にある。
(一) 成立に争いのない甲第二号証によれば、当初の明細書には、その二頁末行から三頁六行にかけて原告が主張するとおりの文言が記載されていることが認められる。しかしこの説明は、機枠(1)に装備されている吹き脚が給紙(13)の後方からその中央に対接することをいうだけであつて、機枠(1)自体が給紙載板(21)の中央部に配設定置されること、換言すれば機枠(1)の外側端である紙捌き車(8)が給紙載板(21)の中央部に寄せられ、機枠(1)の左右外側部に空間部ができることまで述べているとはとうてい解することができない。
(二) 前記甲第二号証によれば、当初の明細書の第七図には、機枠(1)の構成が前記第二、四のとおり図示されており、かつ給紙(13)の最上位に位置するものの両側に、紙捌き車(8)の押接回転によつて生じた盛り上り部(イ)が示されていることが認められる。そしてこの両盛り上り部を解消し延展すればそれより下にある積重された給紙より両側に長く延長されることが明らかである。もし同図において給紙(13)を給紙載板(21)上に載置した状態の全体が示されているとすれば、給紙の最上部がそれより下部のものよりも長くなることはありえないから、給紙(13)の両外側端は図示のものよりさらに左右に延びているはずである。したがつて、吹き脚(12)が給紙(13)の中央に位置することを考慮すると、同図に示されている給紙(13)は、その全体ではなく、一部分である中央部のみが示されその両端部は省略されていると見るほかはない。そうすると、同図においては機枠(1)の外側端である紙捌き車(8)は給紙(13)の両端部ではなく、その中央部に寄せられた状態、すなわち、機枠(1)が給紙(13)の中央部上にある状態が記載されているということができる。そして、給紙(13)は当然給紙載板(21)の中央部に載置されると解すべきであるから、このことはとりもなおさず同図に補正による付加構成が示されていることにほかならない。したがつてこの点に関する審決の判断には誤りがあるといわなければならない。
被告は同図が不正確なものであると主張するが、前記甲第二号証によれば、同図は、少くとも前記の事実が認定できる程度には正確に記載されているのであり、被告のこの主張は到底採用することができない。
(三) なお前記甲第二号証および成立に争いのない甲第三号証によれば、本件補正において、本願明細書の詳細な説明に、当初の明細書に記載されていない「給紙(13)の左右端部に於て捌き送りを行うものに比し、給紙(13)の寸法の大小に依り紙捌き車(8)其の他紙捌き装置の位置を一々調整する必要がなく、………然も機枠(1)の左右の空間部を他の機構装備に利用し得て、」という作用効果が付加記載されていることが認められる。審決はこの作用効果が当初の明細書に記載されていないことを重視しているようである。しかしこのように後に付加して記載された作用効果が当初の図面の記載からだけでは当業者にとつて容易に想到しえない格別なものである場合は別として、前記の程度の作用効果は、補正による付加構成に伴い当業者であれば当然予測しうる程度の事項であるから、当初の明細書にこれが記載されていなくても、当初の図面に補正による付加構成が示されていれば、本件補正でこれを明確にすることは許容されて然るべきであり、これにより明細書の要旨を変更したことにはならない。
二 以上のとおり本件決定は前記のような判断の誤りがあるから違法であり取消を免れない。
よつて原告の請求は正当であるから認容する。